分子遺伝学の発展
1960年代になるとDNAとタンパク質の情報を仲介する伝令RNA(mRNA)が発見され、さらにDNA情報とタンパク質構造との関係すなわち遺伝暗号が明らかにされた。一方ジャック・モノーとフランソワ・ジャコブは細菌による研究から、調節タンパク質がDNA上の遺伝子に結合しmRNAの転写を調節することを明らかにした(オペロン説)。後に高等生物でもこれに似た転写因子が遺伝子発現調節で主要な働きをしていることが明らかになった。このように遺伝情報はDNA→mRNA→タンパク質というふうに一方向に伝達されることが確定し、この図式はセントラルドグマ(分子生物学の中心教義)と呼ばれるようになった。ただし1970年には逆にRNA→DNAの流れ(逆転写)、つまりセントラルドグマの例外もあることが発見された。こうして遺伝現象の基本的な部分は分子の言葉で記述されるようになった。
1970年代には高等生物も分子生物学の対象となる。この背景には目覚しい技術的進歩があった。
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1970年代半ばまでに各種のDNA修飾酵素が単離され、人工的な遺伝子組換えが可能となった。しかしこれによるバイオハザードの恐れが指摘され、アシロマ会議での議論の結果、科学者は厳格な自主規制のもとで研究を進めることとなった(現在はカルタヘナ議定書により法的規制もある)。遺伝子組換え技術は分子生物学をさらに発展させ、またバイオテクノロジーの重要な柱ともなった。